* * * ■「泣かせるぜ」 1964年、弟・渡瀬恒彦の応募がきっかけで日活に入社した渡は、「あばれ騎士道」(65年)で宍戸錠の弟役でさっそうとスクリーン・デビューを飾った。青山学院大学空手部のキャリアを生かして、アクション映画に次々と出演。ついに、少年時代からの憧れだった裕次郎と初共演したのが、この、海の男たちの闘いを描く海洋アクション。「海の愚連隊」と呼ばれる裕次郎の船長と、対照的に生真面目な2等航海士・渡が、反目しながらも、船を沈没させて保険金をせしめようとする悪漢の陰謀を打ち砕く。暴風雨の甲板で裕次郎と殴り合うシーンでは、裕次郎自ら動きを指導、緊張でガチガチだった渡の気持ちをほぐした。 ■「東京流れ者」 当初は渡の歌を売りにした日活得意の「無国籍アクション」として企画されたが、鈴木清順の美学に彩られたキッチュでポップ、映画史上に残る傑作となった。渡が主題歌を歌いながら雪国をさまよい歩くシーンは、ロケではなく人工的なセットで、実に不思議な空間となる。大真面目にヒーローを演じる渡を、オブジェのように扱う清順演出は、いまなお斬新である。それゆえ世界的なカルト映画となった。 ■「愛と死の記録」 大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』を原作に、原爆の悲劇を描いた名作。渡は、4歳の時に被爆したが外見は健康そのものの青年。吉永と出会い、恋に落ちるも原爆症を発症してしまう。渡にとっては初の青春映画で、その演技力は高い評価を受けた。10年後の自分を想像することができない渡と、永遠の愛を信じる吉永。平和な現代に差す戦争の影。この悲恋は観客の感涙を誘った。吉永の平和活動のきっかけとなり、渡も自身の代表作と筆者に語ってくれた。 ■「紅の流れ星」 東京から神戸へ逃亡してきた殺し屋の焦燥と退屈の日々を描いた、裕次郎の「赤い波止場」(58年)を舛田監督自らがリメイク。渡が演じた五郎は、徹底的に軽く、退屈を持て余している。「何か考えることねえかって、考えてるんだよ」。舛田は渡をヌーベルバーグのジャン=ポール・ベルモンドのイメージで演出。五郎を狙う殺し屋・宍戸錠の「ハードボイルド」な魅力と、シラケという言葉がない時代の閉塞(へいそく)感を体現した渡の「軽さ」が対照的。ヒロインの浅丘ルリ子の美しさも際立つ、日活アクションの最高峰!
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August 30, 2020 at 03:00PM
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【追悼】「渡哲也」映画ベスト10 代表作、異色作で熱くなれ〈週刊朝日〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
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