現在は日本で販売される車両の約98%がAT(オートマチックトランスミッション)という状況のなかで、MT(マニュアルトランスミッション)にも復権の気配!?
販売する登録車10モデルのうち、8モデルにMT車を設定するなど、マツダは以前からMTに積極的だったが、日本自動車界の盟主・トヨタも、最近はMT車の設定を増やしている。話題のGRヤリスはラリー用ホモロゲーションモデルだから当然といえるが、カローラやSUVのC-HRにまで6速MT車を設定している。
そんなジワジワと復権してきた3ペダルMT車は、「車を操る楽しさ」の原点として、やはり代え難い魅力をもつ。
両手両足の動きをシンクロさせることで運転の楽しさをフルに感じさせてくれる、そんなモデルと識者が選ぶMTで乗るべき車ベスト10を紹介していこう。
文:松田秀士、片岡英明、斎藤聡
写真:HONDA、編集部
ベストカー 2020年4月10日号
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ロードスターは「MTならではのフィール味わえる」
ロードスター2台を上位に選んだのはトランスミッションとシフトノブがほぼ直結状態にあるので、MTならではのダイレクトにギアを動かしているようなシフトフィールが味わえるから。
では、なぜRF(リトラクタブル・ファストバック)より(ソフトトップの)ロードスターが上位かというとコストパフォーマンスだ。
そのコストパフォーマンスで素晴らしいのが3位のアルトワークス。軽快で運転しやすく、ヒール&トゥなどMTならではの技術を駆使することで、ドライブが楽しくなる。
スイフトスポーツもコストパフォーマンスでは甲乙つけがたい。サスペンションのストローク感がリズムを生み、ステップを刻むようなハンドリング。そして、そのリズムがそのままシフトワークを楽しくしてくれる。
5位のカローラスポーツもサスペンションの動きによるホイールトラベルがしなやかで、シフトチェンジのリズムを支える。
マツダ3はシャシーに対してエンジンが非力だが、そこをMTが補い、非力ゆえに頻繁なシフト操作が必須で楽しめる。
7位のノートMISMO Sはチューニングカーらしいクラフト感があり、ドラポジを含めてMTが楽しめる設定。
10位S660は軽にしては高いが、シフトフィールはMRでありながら正確で素晴らしい。
「運転して抜群に楽しい」フェアレディZ
12年前に誕生した古参モデルだが、運転してバツグンに楽しいのがフェアレディZの6速MT車だ。
FR方式にV型6気筒のパワフルなエンジンを組み合わせ、刺激的な走りを満喫できる。雪道でも走らせてみたが、操る楽しさは格別。シンクロレブコントロールを採用し、気持ちよく回転を合わせてくれる。
また、2018年モデルから採用した高効率クラッチにより、低ミュー路でもスムーズな発進が可能だ。
このZに劣らないほど変速が楽しいのがマツダのロードスターである。クーペスタイルのRFもいいが、非力な1.5Lエンジンをパワーバンドに乗せ、操っている感覚が強いのはオープンのロードスターだ。
ショートストロークの6速MTを変速するのが楽しい。トヨタ86とBRZの6速MTは剛性感が増し、変速フィールとクラッチのバランスもよくなった。が、ドライバーが操っている感覚はロードスターに少し及ばない。
5位にはミドシップエンジンに6速MTを組み合わせたS660を選んだ。低速トルクの薄い660ccターボでパワーを引き出して走る楽しさがある。
注目のGRヤリスは、(プロトタイプに対して)量産モデルでどのくらい変速フィールが向上しているかわからないが、期待を込めて6位。
シャキシャキ回るエンジンはやはりMTが面白い!
マニュアルトランスミッション(MT)の面白さは、より深くクルマの運転に関与できること。
言い方を変えると、深くクルマとの関係を持とうとした時、それに応えてくれるクルマは、MTで乗ることで、より濃厚な楽しさを得ることができるということだ。
ロードスターはまさにその代表的なクルマ。微妙なアクセルワークに、エンジンが動作の意図を汲み取るように反応してくれる。そんな深い楽しさがロードスターにはある。これはRFも同様。
フェアレディZには豪快なパワーとトルクを制御する面白さがある。ATも低めの回転でロックアップしてくれるので、MTに近いダイレクトなフィールはあるが、やはり適切なギアを選び制御する面白さはMTにより多くある。
BRZ/86は上位のスポーツモデル含めMTが面白い。水平対向エンジン独特の吹き上がりの感触が密に味わえる。NAならではのダイレクト感も魅力。
ノートNISMO Sはメーカー製のエンジンスワップチューン。シャキシャキ回るエンジンはやはりMTが面白い。ジムニーはトライアル的な4×4スポーツドライブにMTは必須ってこと。
実は進化!? MTの最新技術最前線
近年のクルマの電子制御化は、アクセルやブレーキにも及び、安全性が飛躍的に高められている。その電子化による恩恵は、ドライバーにシフト操作が委ねられているMTにも及んでいるのだ。
MT免許の取得時、実技の最大の難関が「坂道発進」。右足をブレーキペダルから離してアクセルに踏み換えた瞬間、軽くアクセルをあおりつつ左足のクラッチペダルをゆっくり離す必要があるが、この一連の操作が難しく、後退してしまいがち。
そんな坂道での後退を防ぐ機能が「ヒルスタートアシスト」で、メーカーによって呼び方は微妙に異なるものの基本的な機能は同じ。
例えばマツダ2に搭載されている「ヒルローンチアシスト(HLA)」は坂道発進でペダルを踏み換える際に自動でブレーキの油圧を保持(約2秒間)し、アクセルペダルを踏むと緩やかな勾配では速やかにブレーキを解除。急勾配では充分にトルクが発生してから、ブレーキを解除してくれるのだ。
MTの乗り始めでドライバーを悩ませる「発進時のエンスト」。カローラスポーツに設定された「iMT(インテリジェント・マニュアル・トランスミッション)」には、これを防ぐ機能が搭載されている。
発進時のクラッチ操作を検出すると、エンジン出力が最適となるよう制御するためエンストしにくいのだ。
さらに、ワインディングなど素早く変速する必要がある状況下、ノーマル/エコ/スポーツとある走行モードのなかからスポーツを選択すれば、変速後にエンジン回転数を合わせるよう制御されるため、スムーズにシフトチェンジを行うこともできる。
また、近年のMTはシフト操作系も精度や剛性がアップ。
遊びも少なくなり昔に比べて格段によくなっており、変速時にギアの回転を合わせるシンクロメッシュがダブル/トリプルと多重化されることでよりスムーズにチェンジ可能と、確実に進歩しているのだ。
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April 04, 2020 at 09:00AM
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