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安保条約60年、このままで良いのか? | | 田中均 - 毎日新聞

 改定日米安保条約が署名されて60年。トランプ米大統領は言う。「米国は日本を守る義務があるが、日本には米国を守る義務がない。不公平だ」。表面的に見ればその通りだし、このような見方がこの60年間、日米関係に携わってきた人たちを悩ませ続けてきた。

片務的条約

 安保条約5条は日本の施政権下にある地域が攻撃された時、日米が共同して対処することを定めるが、米国の施政権下にある地域に攻撃が行われても日本が米国と共同で対処する義務はない。

 片務的ではあるが、これが戦後日本の防衛に関する基本的な枠組みだった。太平洋戦争で無条件降伏した日本は戦力を保持せず、紛争解決の手段としての武力行使を放棄する日本国憲法を採択した。そもそも戦後世界は国連中心で国際平和が担保できるという認識が強かったのだろう。

 しかし朝鮮戦争は戦後の厳しい現実を突きつける。その中で吉田茂首相は軽武装で米国に安全保障を依存し、経済再建に全力を尽くすという選択をしたのだ。現行憲法も「個別自衛権」は否定していないが、日本領域外で他国と共に戦う「集団的自衛権」の行使は行えないと解された。

 日米安保条約の片務性を補う形で安保条約6条には米国に対する基地提供義務が定められている。そして基地は単に日本の安全に資するだけではなく「極東における国際の平和及び安全の維持」のために提供されることとなっている。

 極東は地理的概念ではないという説明が行われてきたが、条約締結時には米国が条約に基づいて防衛義務を持つフィリピン、台湾、韓国が念頭にあったのだろう。このような形で基地を提供することは米国の安全保障戦略と合致していた。戦後米国の安保戦略の根幹を成した兵力の「前方展開」は平時にアジア、欧州に米軍を駐留させ、不断の訓練を行っておくことにより紛争を事前に抑止するという考え方だった。

 アジアの最も重要な基地を日本のような安定した先進国に置くことは米国に…

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