人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。
インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間」
田口淳之介さんは1999年にジャニーズ事務所に入所。2006年に6人組ユニット「KAT-TUN」の一員としてデビューしました。高い人気を得ながらも2016年3月の退所に伴いグループを脱退。以降は個人事務所を興しソロ歌手として活動を続ける中で、2019年には逮捕を理由に一時活動休止を余儀なくされました。
ねとらぼでは多様なフィールドで活躍を続ける田口さんへインタビュー。一カ所にとどまらず進み続ける原動力や、独特のマインドを聞きました。
「全部やる、それだけ」 田口淳之介の軸にある“やりたいことは全部やる”マインド
現在はどんな活動をしているのか。情報飛び交うネット上ではなかなか見えない実情を本人にストレートに聞いてみたところ、返ってきた答えは「歌手、俳優、タレント、プロ麻雀士」。2022年3月にプロ雀士としてデビューした際は世間的にも大きな話題に。「好きなこととして仕事にしたい、資格として何かしたい」と新しいフィールドに飛び込んでからの1年が過ぎた実感として「説得力が上がった」といいます。
―― 偏った個人的なイメージですが、麻雀にはアングラな印象が根強くあります。従来のファン層とも異なる世界でインフルエンサーとしての役割も期待される中で、ご自身としてはどう考えていますか?
田口淳之介(以下、田口) いわゆるギャンブルとしてのイメージですよね。麻雀のプロ団体には5団体あって、僕が所属しているのは日本プロ麻雀協会。今は僕以外にもタレントが増えていて、2022年末には浅香唯さんも加入しました。メディアでも魅力を発信する場は確実に増えてきているので、その一端を担えればという思いはあります。
これまでのファンがいない環境へ飛び込んでいくことに怖さは全くなかったです。今、麻雀がこれだけ熱くなってきているのは、やっぱりMリーグ(※2018年にスタートしたナショナルプロリーグ)の存在がものすごく大きい。女性のプレーヤーも増えて、メンタルスポーツとしての麻雀の奥深さを知ろうとする人が増えたことでイメージが変わった。
僕はまだ2年目の新人プロですし、麻雀から僕のファンになりましたという方には会えていません。従来のファンの皆さんは、ステージに立っている僕が一番大好きだと思うんですけど、「私もアプリで勉強を始めました」と言ってくださったり、僕が開催する教室に来てくださったり、僕の好きなことを応援してくださるファンの皆さんこそ、バイタリティーが高くて感心しきりです。順応力がすごい。
―― プロ麻雀士として、田口さんならではの強みを感じることはありますか? メンタルが問われる競技だけに、人に見られる仕事を長年続けてきたことはアドバンテージになるのでは?
田口 プレースタイルでいえばまだ全然先輩方には及ばないですが、“魅せる”という点で所作に気を付けています。放送対局でも、手元が美しいと感じてもらえれば麻雀のイメージも変わると思うし、自分の武器でもあるのかな。メンタル的にも緊張には強い。同期が初の放送対局で緊張しきりでペースを乱す中でも、僕には全く影響がなかったので。
―― 最近ではポーカーの大会にも参加されていて、二足のわらじどころではない印象ですが、ご自身の中にマルチタスクのコツはありますか?
田口 もともと何でもやりたいし何でもできちゃう器用な部分はあります。以前「極楽とんぼ」の番組で加藤(浩次)さんからは「器用貧乏は何もできないんだよ」って言われちゃいましたけどね(笑)。
とにかく吸収するのが得意なんです。振り覚えもめちゃめちゃ早いし、自分の特技だと捉えています。時間は限られているからスケジューリングは徹底しなくちゃいけない。その上で何かをやるために別の何かを犠牲にした経験はないですね。全部やる、それだけ。
―― それでやれてしまうのがさすがです。その上で現在の活動への満足度をMAX100で表すとすれば?
田口 80くらいですかね。パンデミックのせいでライブにも制限があった中で、早い時期から配信をはじめとしたオンラインコミュニケーションにかじを切ったので、ファンの皆さんとの交流にラグがなかった。地方に住まわれてる方もいるし、なかなか会いに来られない方もいる中で、使えるものは全部使いたいと。そういう点ではダメージが少なかったと考えています。
残りの20は、今まだやれていないお仕事があるから。俳優業もですけど機会がなかった領域には余白がある。それがまた軌道に乗ったり新しい仕事が増えたりすれば100に近くなるのかな。
アンチの意見も「もっと頑張ろうと自分のポジティブなパワーに」 圧倒的“陽”の力
インタビュー中は常に笑顔で、逮捕に関する話題もためらいなくポジティブな言葉で答えてくれた田口さん。「落ち込むことは全くない」と言い切り、「その都度振り返ってみればどうした方が良かったとかはある」「過去から学ぶこともたくさんある」としつつも、幼少期を振り返りながら「今を生きる」ことの大切さを語っています。
―― 常に今が一番だと。大事な考え方ですね。
田口 犬もそうなんですよ。ワンちゃんも今を生きてるんです。いくら飼い主さんが家を空けて不満でも、帰ってきたときには今が一番ハッピーだからしっぽを振って喜ぶ。僕、犬みたいな人間なんです。これからも年を重ねていって、やがて人生の幕が下りるときに「やっぱり今が一番、最高だな」と思える人生を歩んでいきたいです。
―― 逮捕直後の期間は一時活動の休止も余儀なくされました。さすがに当時は今のようにポジティブには考えられなかったのでは?
田口 そんなことはないです。ただ全国ツアーを控えていた時期だったので、既に動いているスタッフの皆さんや、チケット代だけではなく旅費を含めて準備をされていたファンの皆さんに申し訳ない気持ちが一番大きかったです。ファンレターやメッセージを送ってくださるファンの方もたくさんいて、そうした応援の声や支えてくださるスタッフの皆さんがいたおかげで再起しようと思えました。
―― 例えばサラリーマンになっていた世界線もあり得た?
田口 ないですね。13歳から芸能界に入ってそれしか知らない人生を歩んできて、バイトもしたことがない。ただ自分の好きなことをして生きる、それが今はかなっているので他の道は考えられないかな。よく「過去の栄光にすがってもうそこから抜け出せない」という人もいますが、その何が悪いのか僕には分からないし、自分が培ってきたものを否定する理由は何もない。自分が犯してきた過ちは否定できないし、全部自己責任で生きているんだったら「じゃあ胸を張って生きた方がいいんじゃない?」と思うんです。
―― 過去しか知らない方に、今の自分を見てほしい、知ってほしい気持ちはありますか?
田口 もうすでに見ていただいているのではないかと思います。アンチの方こそ熱心に追いかけてくれている気がする。価値観なんて人それぞれ。何を言われても僕は全然気にしていなくて、逆にもっと頑張ろうと自分のポジティブなパワーに変えられる。
―― 落ち込むことがないのは考え方なのか、それとも持って生まれた性質なのでしょうか?
田口 子どものころからだいぶポジティブだったと思います。親の離婚、再婚、離婚と家庭環境もいろいろ変わっていましたが、その度に順応していたし愚痴ったこともないし、親になんだかんだと言ったこともないし、ある意味ドライだったかも。
ただ、自分の人生は自分がどう生きるかが大事だと当時から思っていたのかもしれません。今の自分を作るのは自分自身だから、生まれ持った性質なのかもしれませんね。
―― 強い……! だとすると「私も前向きになりたい」という人へアドバイスもしにくいですね。
田口 自信のない自分がいないんですよ。だから逆に、その人たちの気持ちにどうやって寄り添えるのかが僕の課題。自分にできることとしては圧倒的な光で照らすことしかない。「やっぱり私……」って下を向いていても、キラキラ輝いている宝石があったら見ちゃうじゃないですか。そういう存在でありたい。
アドバイスなんておこがましいことは言えなくて、「楽しければいいじゃん、それしかなくない?」「だって分からないし、俺楽しいもん」みたいな。そういうことしか言えないんですよ。
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