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「鈍器で殴るくらいの文章を書きたいな、と…」作家・千早茜が直木賞受賞作『しろがねの葉』で描いた“闇の世界” - 文春オンライン

――『しろがねの葉』での直木賞受賞、おめでとうございます。発表直後の昨夜(1月19日)の記者会見では、「全然とれると思ってなかったのでちょっと呆然としている感じ」とおっしゃっていましたが、一夜明けて実感はわきましたか。

千早茜(以下、千早) 嵐のような夜でした。私自身がバタバタしているうちに、たくさんお祝いのLINEやメールがきていて「あ、とったんだな」という気持ちになりました。夜中のうちに父からもメールがきていて、朝にそれを見てやっと気持ちがしっくりした気がします。

©文藝春秋

――どういう文面だったのでしょうか。

千早 父は獣医で、今は企業勤めですが、病理を専門にしています。文学のことは全然わからない人ですが、「私が博士号をとることと同じで、とらないことには先に進めない状況だったのではないでしょうか」みたいな気遣う内容で。「呪縛から解放されたような気分なのかな。気分新たにどっしりと活動していってください」といったことが書かれてありました。

 博士号を取っても研究はその後も続くのと同じように、直木賞をとってもこの先ずっと書いていくんだなと思ったらしっくりきました。これは通過点なんだなという気持ちになりました。

死ぬまで書いていたいという気持ちがある

『しろがねの葉』(新潮社)

――前回の直木賞ノミネートが2014年の『男ともだち』。今回は約8年ぶりの、3回目のノミネートでしたね。

千早 そうなんです。でも私としてはその8年が全然長くなかったんです。『男ともだち』で直木賞の候補になった時はデビューしてまだ5年くらいで、長篇も2作くらいしか書いていなくて、正直とっても怖かったんです。落選した時は残念でしたし担当者が泣いている姿を見て申し訳ないという気持ちにはなりました。でも私自身は、これで受賞したらずっと『男ともだち』のような作品を求め続けられるんじゃないか、ということも怖かったし、落選したらもう仕事がもらえなくなるんじゃないかって不安もありました。

 私は死ぬまで書いていたいという気持ちがあるので、仕事をもらえなくなって書けなくなったらどうしようと思ったんですけれど、ありがたいことに、この8年間まったくそんなことはありませんでした。目の前にはいつも向き合うべき作品があったし、むしろやりたいことがどんどんできるようになっています。賞をとらなくても自分がその状況を作ってこれたんだという、精神的に安定した時期での今回の受賞なので嬉しいです。

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