2019年、14年もの間眠り続けた、石川智晶と梶浦由記のユニット「See-Saw」が動き始めた。2月にフライングドッグ10周年記念ライブ“犬フェス!”で「あんなに一緒だったのに」を披露すると、梶浦が椎名 豪と音楽を担当したアニメ『鬼滅の刃』で「Voices From The Past」などの劇伴楽曲に石川を招聘、12月にはついに17年ぶりのソロライブ “See-Saw LIVE ~Dream Field 2019~”を開催する。それから半年が経ち、第3期See-Sawと呼ぶにはあまりに儚い活動の締めくくりとしてファンの前に舞い降りたのが全37曲を網羅した、今回のコンプリートベスト『See-Saw-Scene』となる。コンプリートベストを前に語った石川と梶浦の言葉を横に、もう少しだけ、See-Sawの音楽が見せる情景にひたりたい。 ――昨年末のSee-Sawライブ “Dream Field 2019”はSee-Sawのファンにとって、そして石川智晶ファンや梶浦由記ファンにとっても忘れられない一夜だったと思いますが、お2人にとってはどのような時間だったのでしょうか? 石川智晶 17年ぶりの“犬フェス”、“See-Sawライブ”、そしてこのコンプリートベストの発売にいたるまでの一連の流れは、誰も意図していなかったもので、巡り合わせの流れに任せてここまで来た、という感じでした。すでに石川智晶としての時間の方が長いので、景色を伺いながらではあったんですが、まるで時間をワープしたかのように、See-Sawのボーカリストとしての戸惑いは感じませんでしたね。 梶浦由記 私にとってSee-Sawは、自分の音楽人生が始まった場所ですから、何度かの休止期間を経ても、自分の音楽に立ち返る場所であったと思います。でも、スタートラインに立ってから長い長い時間が経っているにも関わらず、あれだけたくさんのお客様がSee-Sawの音楽を聴きたいと集まってくださり、あたたかい拍手で迎えてくださったわけですから、嬉しくないはずがありませんよね。ただただ幸福な時間でした。 ――今回のコンプリートベストは、昨年のSee-Saw復活劇を締めくくるにふさわしいものかと思いますが、最初にリリースの話を聞いたときはどのような気持ちになりましたか? 石川 とてもありがたいお話だと思いました。今このときに再び、See-Sawの曲に光が当たる機会をいただけたわけですから。人生にタイミングというものはいろいろとあると思いますが、「思いがけず」が去年から続いていますね。 梶浦 See-Sawの、特に昔の曲はなかなか音源として聴いていただける機会がなくなっていましたから。興味を持ってくださる方に、See-Sawをあまさずお届けできる、というのは純粋に嬉しかったです。 ――『See-Saw-Scene』というアルバムタイトルはどなたの命名によるものでしょうか? 石川 命名したのは梶ちゃんです。 梶浦 はい、私が考えました。 ――どういった気持ちを込めたタイトルだったのですか? 梶浦 さっきも話に出ましたが、去年はSee-Sawとして皆様に皆さまに聴いていただける、見ていただける「Scene」が久しぶりに多くあったんですよね。それに、文字通りのコンプリート版ですから。See-Sawの景色すべてをご覧いただけるリリースだなと思い、つけました。 石川 今の心境的に私も気に入っております。 ――このコンプリートベストを機に、初めてSee-Sawの景色を眺める石川智晶ファン、梶浦由記ファンもいると思います。もしお2人が、これがSee-Sawという象徴的な1曲、を紹介するとしたらどの曲になりますか? 梶浦 いちばん皆さまに知っていただけている曲、ということでしたら「あんなに一緒だったのに」になるのでしょうけれど、象徴的な1曲となると選ぶのはとても難しく……。でも、そうですね。初めて書いた8分の6拍子楽曲という「優しい夜明け」とか、ちーちゃんのストレートな歌がぴりぴりと心地よい「千夜一夜」とかはそうかもしれませんね。ただ、ほかの曲も聴いていただけたのなら、嬉しい曲ばかりです。 石川 そうですね、1曲を選ぶのは大変難しいです。情報の多さから、ガンダム曲にまず触れる方が多いとは思いますが、「優しい夜明け」、あとは「Obsession」や「edge」などは聴いていただきたい曲です。中毒性がある楽曲だと思います。 ――全See-Saw楽曲をあらためて振り返り、お2人にとって転機になった曲というのはありますか? 梶浦 転機といえばやはり、「あんなに一緒だったのに」だと思いますよ。作品に恵まれ、ヒット曲となったことで逆に、その後の2人のソロ活動にも繋がっていったと思いますから。それに個人的なことを言えば、当時、BGM作曲のお仕事を多くさせていただいていましたが、あの曲で「歌も書く人」と認識してもらえたのかな、とは思っています。 石川 そうですね。やはり「あんなに一緒だったのに」だと思います。自分の創作活動にも影響がありましたから。それまではどこか、自分の作詞に納得いかないところがありましたが、新たに表現のリアルな軸を与えてくれたという感覚があって、その後の制作においてもブレなくなりました。 ――ライブで最新のSee-Sawを体感したことで聴きたくなった方も多いと思いますが、あらためて当時のSee-Sawも味わっていただきたいですね。 石川 ライブでは時間の関係で、お披露目できない曲がたくさんありました。「また会えるから」は言葉に対する捉え方が増えた今なら、まったく違う色をお届けできると思いますが、逆に、「遠いティンパニ」という曲は、当時の私の声のままで聴いてほしい、と思える曲です。人生の経験が必ずしも歌を高めるわけではなくて、当時の私の真っ直ぐな歌だからこそ、届きやすい曲もあるはずだと思ってます。 ――今回、ボーナストラックとして「新しい予感 ~Only at JUSCO~」が収録されます。これは、東海・関西地区ではおなじみの総合スーパーだった「ジャスコ」のイメージソングとして作られた曲でしたが、楽曲制作やレコーディングで何か覚えていることはありますか? 梶浦 これは、鮮明にメロディが記憶に残っているんですよ。やっぱり、CM曲ということでインストゥルメンタルであったのと、他のバージョンもいくつかレコーディングをしていたということもあって。それに、「JUSCOの歌」と初めから決まっていたことで逆に振り切って、とても楽しく作曲させていただいた覚えがありますね。 石川 逆に私としては、CM制作スタッフの中でレコーディングが行われていたので、居心地があんまり良いものではなかったというか、普段の音楽制作とは違った雰囲気の中だったことを覚えています。でも、今聴くと「なるほどね」と妙に納得がいくほど、JUSCOに寄り添ったポジティブ楽曲になっていて、感動しました。 ――See-SawライブのMCでも少し話されていましたが、パートナーに対して今だからこそ感じるところがあれば教えてもらえますか? 今の石川さんから見て、梶浦さんが作詞作曲した楽曲にはどのような魅力があるでしょうか? 石川 それはもう、誰かのマネではない世界観ですよね。メロディの行き方なのか、音の選び方なのか、とにかくある種の「クセ」がいつしか誰かの「クセ」になるような音楽になっていて。それが「梶浦ブランド」を作り上げたのだと思います。 ――梶浦さんから見た、石川さんの歌や詞の魅力というのは? 梶浦 ノンビブで芯のあるアジアンボイスも魅力的ですが、ともかく「上手い!」ですね。作詞家としては、キャッチーな言葉選びと、そして言葉を削るセンスがあって。時には強引とも思える単語の並びが無駄なく意味を持ってキラキラする、個性とはああいったものなのだろうなと思います。 ――昨年末のライブであらためて、See-Sawが愛されているユニットであると誰もが実感したと思います。デビューから30年近くを経て、かつ休止期間が20年ありながらも人々を惹きつけた理由を見つけるとすると、どこにあるとご自身では考えられますか? 梶浦 そこは私が教えてほしいくらいのことです(笑)。ただ、2人とも器用なたちではないので、そんな2人が全力で取り組んだら「See-Sawらしい」音楽しか作れなかった、その偏狭な「らしさ」がちょうど時代の片隅にストンとハマった、ということだったのかもしれませんね。 石川 See-Sawは2人とも、実のところ誰かと共存する性分ではない気がします。非常に個々が独立していて、自身の世界を頑固なまでに進もうというところとか。それがSee-Sawとしての厚みになっていたのでは、と思います。当時はメロディと歌が、不思議とカチッと合う瞬間があり、独特なSee-Sawの世界ができてしまう、サプライズを感じる瞬間がありました。それを皆さんも感じてくださるからでしょうかね。とにかく皆様には皆さまには感謝するばかりです。 梶浦 本当に。人との出会いに恵まれたということも含めて、巡り合わせも大きかったですしね。See-Sawは幸運だったと思います。 ――フェス出演、ライブ、コンプリートボックス発売ということで、第3期See-Sawの始動をつい期待してしまいがちですが、お2人を見ていると「それはないだろう」と理解してくれるファンばかりだと思います。そんな、See-Sawを愛してくれる人々に向けて、何かメッセージをいただけますか? 石川 17年ぶりにこのようなSee-Saw’s yearを体験できて、驚きと感謝です。皆さまの人生の中で、ひとときでもSee-Sawの楽曲が寄り添う時期があったのだとしたら、過去のすべてのことを肯定できるような気がします。これからもこのアルバムが皆さまの背中を後押しするものであってほしいと願うばかりです。今までも、これからも、ありがとうございます! 梶浦 今までいろいろな時間と場所でSee-Sawを耳に止めてくださった方、「今また聴きたいな」とライブに来てくださった方、皆さまのおかげで去年はSee-Sawとして本当に最高の1年を送ることができました。このCDが、懐かしいSee-Sawとの再会になったり、あるいはまた、知らなかった新たなSee-Sawとの出会いの機会になったのなら本当に嬉しいです。ありがとうございます! INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー) ●リリース情報 See-Saw Complete Best 『See-Saw-Scene』 6月10日発売 価格:¥4,500+税 品番:VTCL-60524~6 CD3枚組 (CD初収録のボーナストラック1曲含む 全37曲を収録) 歌詞、ミュージシャンクレジット、全曲解説などを収めた56ページブックレット。初回生産分のみブックケース仕様 <DISC1> 1.Swimmer 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:土屋 学 2.La La Africa 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄 3.かくれんぼ 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:坂本昌之 4.Timecard Love 作詞:石川智晶 作曲:西岡由紀子 編曲:土屋 学 5.Heaven 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:土屋 学 6.キライになりたい -Snow Drop version- 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記・石川智晶 編曲:土屋 学 ストリングスアレンジ:溝口 肇 7.うた 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:土屋 学 8.永遠 作詞:石川智晶 作曲:西岡由紀子 編曲:小西貴雄 9.不透明水彩絵具 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄 10.遠いティンパニ 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄 11.心の絵本 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:坂本昌之 <DISC2> 1.スレンダー カメレオン 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ ホーンアレンジ:小林正弘2.素肌 ノーメイク 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ 3.うす紅 作詞・作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄 4.Chao Tokyo 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:小西貴雄 5.抱きしめている 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ 6.誰か私と… 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ 7.NERVE 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記・石川智晶 編曲:新川 博・斉藤ノブ ホーンアレンジ:小林正弘 8.たった一人のあなたへ 作詞:石川智晶 作曲:西岡由紀子 編曲:小西貴雄 9.また会えるから 作詞:石川智晶 作曲:梶浦由記 編曲:新川 博・斉藤ノブ 【Bonus Track】(初CD化) 10.新しい予感 ~Only at JUSCO~ 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 <DISC3> 1.君がいた物語 ~Dream Field Mix~ 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 2.edge 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 3.黄昏の海 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 4.LOVE 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 5.Emerald Green 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 6.あんなに一緒だったのに 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 7.千夜一夜 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 8.月ひとつ 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 9.夏の手紙 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 10.Obsession 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 11.記憶 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 12.Jumping Fish 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 13.優しい夜明け 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 14.indio 作詞・作曲・編曲:梶浦由記 15.静寂はヘッドフォンの中 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 16.君は僕に似ている 作詞:石川智晶 作曲・編曲:梶浦由記 ※このCDにおいて、表記は石川智晶にて統一させて頂いております。 6月10日より、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて配信スタート <See-Saw Profile> Vocal & Chorus:石川智晶、Keybords:梶浦由記のユニット。 1993年7月Vocal:石川智晶、Keyboards:梶浦由記、Bass:西岡由紀子、3人のユニット“See-Saw”としてデビュー。1994年4月より現在の2人となり、1995年2月にシングル「また会えるから」を発売後、それぞれソロ活動を開始する。2001年、梶浦由記がBGMを手掛けたテレビアニメ『NOIR(ノワール)』に「indio」を収録したことをきっかけに“See-Saw”としての活動を再開。2002年、7年振り7枚目のシングル「Obsession」をリリース。 オリコンでは初登場45位ながらも、その後18週に渡ってチャートインし続けロングセラーヒットとなる。 10月、テレビアニメーション『機動戦士ガンダムSEED』のエンディングテーマ「あんなに一緒だったのに」がオリコン初登場5位を記録。2006年、再び活動休止しそれぞれのソロ活動を展開。 2019年、17年ぶりとなるワンマンライヴ「See-Saw LIVE ~Dream Field 2019~」を東京国際フォーラム ホールAにて開催された。 関連リンク See-Sawオフィシャルサイト梶浦由記オフィシャルサイト
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June 11, 2020 at 07:22PM
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