この3月から4月にかけ、KANA-BOON、KEYTALK、ヒトリエが相次いでベストアルバムを発表。2010年代の人気バンドたちがこのタイミングで活動を総括しているのは奇妙な符合だ。このバンドたちの大きな共通点として、「4つ打ち」を得意としていることが挙げられる。
「4つ打ち」は、2000年代以降の日本のロックを特徴づけるスタイルのひとつだ。この言葉は4分音符で規則的に奏でられるバスドラムを指す一般的な表現で、テクノやハウスといったダンスミュージックでよく使われてきた。
それがロックになるともう少し違うニュアンスになる。具体的には、BPMが早め(160~180くらい)で、コード感よりも単音のリフやカッティングで跳ねるように楽曲が進んでいく。リズムがシンプルでわかりやすくノリやすい(とされる)ことから、フェスなどの現場に映える“フェスロック”とも親和性が高かった。
誕生から20年近くが経とうというこのスタイルは、いっとき(2010年代なかばくらい)は批判されることも多かった。しかし、未だに根強い人気を誇る定番としての地位を確立し、いまでも「4つ打ち」を採り入れた楽曲がリリースされ続けている。
先に挙げた3つのバンドは、2000年代末から活動を開始し2010年代に入ってメジャーデビューした、「4つ打ち」のスタイルが確立して以降のいわば第2世代と言える。キャリアを重ねるにつれて、「4つ打ち」というくくりにはもはやとどまらない変化も遂げてきた。ベスト盤リリースを機会に、三者三様のアンサンブルを聴かせるこれらのバンドたちに改めて耳を傾けてみたい。
KANA-BOONは「4つ打ち」の代表格として、この看板をあえて背負ってきたところがある。初期のサウンドはスリーピースらしいタイトな演奏で、休符を活かした歯切れのよいカッティングとベースライン、そして高速の「4つ打ち」の魅力がこれでもかと溢れている。キャリアを重ねるとプロダクションが洗練され音の厚みが増し、いきおい休符を活かしたキメのフレーズを聴かせるよりも、歌メロ、ギター、ベースラインいずれも、メロディの流れが楽曲を牽引するようになる。同じ「4つ打ち」を取り上げて比較しても、初期の代表曲「ないものねだり」と近年の楽曲(ベスト盤収録曲で言えば、2017年の「4つ打ち」チューン「ディストラクションビートミュージック」や、要所要所に「4つ打ち」がフィーチャーされた2019年のシングル「ハグルマ」など)をを比較すると、大きな変化があることがわかる。
KEYTALKも最初期こそ味付けの少ないシンプルかつタイトなアンサンブルが洒脱な雰囲気を漂わせていたが、シンガロングしやすい歌メロや合いの手など、いかにも“フェスロック”的なサウンドに変貌していく。ベスト盤で言えば、「MONSTER DANCE」あたりが節目だろう。2ndアルバム『HOT!』(2015年)以降、いきなりボーカルの存在感が高まり、リスナーも参加できる合いの手が盛りだくさんになる。EDM的なギミックも貪欲に取り入れ、華やかさは群を抜いている。
ほか、初期から一貫するバンドの特徴として、楽器同士の細かい掛け合いで聴かせるよりも、バンドが一丸となってつくりだすグルーヴに重点が置かれている点がある。歌メロとメロディ楽器(特にリードギター)のユニゾンがしばしば用いられるのも興味深い。
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