2020年02月18日
フィジカル/メディカル2月から約2ヶ月間は、「スポーツをする子どもの年齢に合った食育」の概要をお届けします。1月に「食育とは?」を食育連載担当者で話した際、ジュニア年代の食育は次のようなテーマ設定になりました。このテーマに沿い、各カテゴリーの食育でどんなことが大切で、どんな食事をしたらいいのかをインタビュー形式で紹介していきます。また週によっては、食事例としてレシピも組み合わせていきますのでお楽しみに!
▼小学校1・2年生
三食のごはんとおやつを食べられるようになる
▼小学校3・4年生
どんな食べ方をしたらいいかを考えられるようになる
▼小学校5・6年生
大人の準備期として体が何を必要としているのかを知る
監修●川上えり/構成●北川和子
管理栄養士の川上えり先生
体づくりのためのおやつを知る
――学年が上がるごとに、好き嫌いが決まっていく傾向にありますよね?
川上 当然、年齢が上がると好き嫌いが決まっていくと思います。早めの反抗期が訪れた子は、親に反発して頑なに食べないこともあるでしょう。「これは体のためにいいんだよ」という話をすんなり聞いてくれる年齢のうちに、味覚と正しい食生活を身につけておくのは理想的だと思います。
――好奇心が旺盛な時期にいろんなものを食べさせておいたほうがいいですよね? それこそ「年代別トレーニングの教科書」には、小学校1・2年生の特徴に「好奇心旺盛」という言葉がそのまま記載されています。
▼小学1・2年生の性質・特徴
1.常に体を動かしたい
2.好奇心旺盛
3.まだ集中力があまりない
4.他人と比べたがる
5.まだ目的意識はあまり無い
6.基本的な運動能力の成長期
(参考)
川上 本当にそう思います。
――例えば、サンマを例に挙げてみます。「骨を取るのが面倒」と言って、嫌いな大人もいるけれど、やり方次第では「骨を取るプロセスを楽しめる」1~2年生のうちにチャレンジさせておけば、嫌いにならずに済むかもしれません。
川上 年齢によっての特徴を利用するのは一つの手ですよね。「お母さんのかわりに骨をとってくれる?」とお願いすれば、小学校低学年のうちはまだ喜んでくれる年頃かもしれません。
――確かに小学校低学年なら「自分がやってあげてる」と思えるでしょうけど、小学校5・6年生になると「親に利用されてる」とバレるでしょうね(笑)。少し話を「間食」に関することに戻しますが、スナック類は塩分がたっぷり入っているし、菓子類は糖分が多いし…。でも、お母さんが手作りする余裕はそう多くありません。だとすると、既製品で「このおやつはオススメ」できるものはありますか?
川上 基本的に、手作りおやつは「子どもも一緒に楽しんで作れるものがいいのでは?」と感じています。発酵のいらない手ごねパンや、手作りのたまごボーロは作るのがとても簡単ですし、食べるのも楽しいと思います。あと、煮干しは体にいいですが、そのまま食べるのは抵抗がある子もいるでしょうね。例えば、ナッツと一緒に甘辛く味付けするのもおいしいです。カルシウムもビタミン・ミネラル類もたっぷり摂れます。
――おやつの話も概念的な話をすると、子どもにとっての「体づくりのためのおやつ」という価値観が持てそうです。手作りする時間がなくて、おやつを買い置きする家庭もありますが、どういったものを買い置きしておくといいでしょう?
川上 お惣菜売り場のおやつは、意外とオススメです。焼きいもとか、大学いもとか、おはぎとか。サッカーをしている子たちは体をよく動かしているから、ある程度の「糖質」は必要です。白砂糖の摂取を「0(ゼロ)」にすることは難しいでしょうから、量さえ気をつけてもらえればと思います。
「三角食べ」と「食べる順番」を意識し、食事をより美味しく
――子どもが大きくなったときに「うちのお母さんはあんなおやつを出していたけど、体のことを思ってくれていたんだな」と気づく日があるかもしれませんね。
川上 ちなみに、文部科学省や厚生労働省が幼児期、小学校時期に必要な栄養の基準を出しています。保育園や小学校の給食の献立作りでは、こうした基準を参考に作られています。
▼参考
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586577.pdf
私が献立作りに関わっている公立の保育園では、「必要な栄養をどれくらい満たせたか」という達成率を1食ごとにチェックしています。予算内で献立を考えなければならないので、それを踏まえてお楽しみメニューを取り入れながら冷凍品を使わず、給食だけではなく、おやつもほとんど手作りで対応しています。先日、大きな魚をさばいて骨をとるような調理を見せたら、子どもたちも喜んでくれました。ただ、家庭では、基準の数字をストイックに意識して調理をするのは難しいし、数字にとらわれすぎてもストレスばかりが増えます。
――お話をうかがっていると、小学校低学年のうちにいろんなものを食べさせるのはいいけれど、注意点が二つありますよね。一つは「アレルギー」。もう一つが「過剰摂取」。特に、塩と砂糖はどうしても摂りすぎのリスクがあるので、「ラーメンの汁を飲み干してしまったら、数日間はラーメンを控える」くらいのバランス感覚は必要なのかな、と。
ここまで低学年の話をしてきました。
ここから小学校3・4年になってくると、もう少し他人の立場になって物事を考えられるようになってきます。と同時に、他人に対して競争心を抱くようになります。当然、「負けたくない」「勝ちたい」という気持ちも生じてきて、ようやくサッカーに本格的に向き合うようになる子も増えてきます。
すでに食事面では「好き」と「嫌い」を自分の中ではっきり自覚していますが、「どうやって自分で食べたらいいのか?」という部分にアプローチをしていけたらいいな、と。例えば、食べ方ですが、「三角食べ」という方法があります。小学校3・4年生になれば「なぜ三角食べをするのか」という理由が理解できる年齢です。そもそも三角食べは何のためにするのでしょうか?
川上 例えば、最初に糖質を多く含む白米を一気に食べてしまうと、血糖値が急激にあがりやすくなり、脂肪が蓄積しやすくなると言われています。私がアスリートに栄養指導をするときには、食べる順番も意識するように伝えています。
――炭水化物、汁物、野菜、主菜があるとして、どういうふうに食べたらいいのでしょうか?
川上 これは個人的な意見ですが、私は汁物から食べています。温かいものを胃に入れると「今から食べますよ」という合図になると同時に体温が上がり、体が食事モードになります。ごはんを先に全部食べてしまうような「ばっかり食べ」には注意したいところです。
――そのあたりは、それぞれの栄養士さんによって異なるのでしょうか?エビデンスという話になってしまうと食育本来の意味から逸脱してしまうのですが、最近は「炭水化物を食べる前に野菜から食べる」ということも話題になりました。
川上 最初に生野菜を食べると体が冷えてしまうため、やっぱり温かいものをオススメします。理由としては、先程もお伝えしたように、体温が上がって内臓が食事モードになります。また口腔内では、汁物は旨味が凝縮されているので、はじめに味覚が働きます。血糖の急上昇を抑えるためにもスープを飲んで、おかずを一口食べて、その後にご飯という順番がオススメです。
――温かい汁物を最初に食べると、ホッとして体の機能というか、食欲もわきそうですね。子どもたちにとっては食べる物だけではなく、自分なりに「どうやって食べるか」というところまで意識できるようになるとしたら、小学校3・4年は大切な時期かもしれません。やはりお母さんたちに話をうかがうと「ばっかり食べ」に悩んでいる方が多いように思います。
川上 数字的に総栄養量としては変わらないことかもしれないけど、食事は「口中調味」(口の中でおかずとごはんを混ぜて味を調節することができる)のも楽しみ方だと思います。なので、「ばっかり食べ」は食べる楽しみの一つが減っていることは言えるでしょう。「ごはんだけ」「おかずだけ」ではなく、ごはんとおかずを一緒に食べるとさらにおいしくなるという体験をたくさんしてほしいですよね。
次回は、簡単手作りおやつのレシピをご紹介します。
>>2月の食育連載第四弾は「2月25日(火)」に配信予定
【プロフィール】
川上えり(管理栄養士)
海外プロサッカー選手の栄養アドバイスや、FCジュニオールの栄養アドバイザー。海外・国内遠征・合宿帯同や、アスリート向けレシピ制作、子育てママ向けのコラム執筆などで活動中。▼Instagram/Twitter
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